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暗黒竜の胎動 (1-1) ー生命の樹物語ー

 平和な時を迎えたアデンの人々の多くは、世界がまだ危機に直面している事を知らない。
 巨大な地下帝国「ラスタバド」ーダークエルフ達との戦争は、真の敵を見出したブルディカ達と若き紅の獅子の王率いるアデン勢の勝利に終わった。だが、狂ってしまった冥王ダンテスを止めることは叶わず、その狂心によって召喚されてしまった「ギルタス」という神の存在を、完全体半ばにして中断させるのが精一杯であった。それは今もダークエルフ達の聖地に、確かに存在する。
 不死の賢者の異名を持つ魔導師の言葉を信じるならばー。
 「ギルタスの意識が戻ったならば、世界にどのような影響があるか計り知れない」
 
 アデンの動乱の歴史は、未だに結末を書き込まれてはいないのであった。

 アデン王国の中にあるケント領は、古くから武術の国として有名であった。
 独立した国家であった時代もあり、各地の領地に仕える騎士団の筆頭騎士や騎士団長の多くがこのケント領からの出自で、今も武芸を重んじる伝統は受け継がれている。
 現在のケント領を治めるのはセイレイ・コーラスという美しい女剣士であり、歴代のアデン王の中にあるコーラス王の血脈を持つ人物である。
 彼女が治めてから初の武術大会が開かれる、という知らせはアデン商団の配る新聞で全土に知らされ、開催日が迫るにつれて、多くの武芸者や剣士達がこのケントに集まってきていた。
 城下町にある宿屋や酒場も人で賑わい、露店などでは様々な武具が取引されている。
 「トンタークの息吹亭」も、例外ではなかった。
 一階が大きな酒場、二階が宿という、ごく普通の造りの老舗だが、朝から深夜まで多くの旅人が出入りしている。
 勿論、ガラスが割れる音が鳴り響き、突如として喧嘩が始まるような事も、ごく普通にある。
 それがたった今、酒場のカウンター席で起き始めたのも、不思議な事ではなかった。
 最初に鞘に収まった剣に足が当たった、謝れ、と荒くれた剣士が食ってかかった。
 当たったくらいでなんだ、とこちらも体格のいい剣士がその胸ぐらを掴む。
 やるのか、と腕を払いのけ、剣の柄に手をやった時に、別の剣士が割って入ってきた。
 「続けるなら、店の外でやりなよ、お二人さん」
 初老と見受けた人物が穏やかな口調で言ったが、お二人さんには逆効果だったようだ。
 なんだとこの野郎、と剣を抜こうとした瞬間、初老の剣士が二人を見た。
 その視線に目が合ったその時、お二人さんは悟った。
 ーこの老人と戦えば、死ぬ。
 声もなくその場を去る二人を見届けもせず、カウンター越しに初老の剣士が店主に言った。
 「口直しに、いい酒もらおうか。奥に隠してあるんだろ?」
 「隠すって・・・何をだい?」
 「ロミュラン・エール、さ」
 初老の剣士はそう言って、店主に目配せをひとつ飛ばした。
 
 
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