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人形が夢見るは如何なる未来か(2) ーブルディカの記憶ー

 沈黙の洞窟を出たブルディカは、アデン王に仕える魔法使いの張と共にアデンへと向かい始めた。王とドレビンは再び瞬間移動の魔法で王都に先に帰還し、残った張がブルディカに同行することになった。洞窟に来た時の瞬間移動の魔法によって、張の魔力が尽きかけていた事も考慮して、である。
 今から話せる島に向かっても新たに得られる情報はないだろう、との判断であったが、首都アデンに向かうにはそれなりの理由があった。
 行方不明となったラビエンヌと親交の深い人物が首都アデンに滞在しているからだ。その人物もまた象牙の塔の錬金術士の一人であり、若き天才と謳われた人である。
 洞窟を出た二人は、ふと空を見上げた。
 王達の不安を余所に、アデンに降り注ぐ太陽は収穫の時を告げる黄金色に輝き始めていた。

 首都アデンーそこは広大なアデン大陸を統治するべく建築された王都である。華やかな屋台が犇めき、高級住宅街が立ち並ぶ反面、スラム街と呼ばれ下級階層の人々が暮らす場所も存在する。光と闇が混在する巨大な都の商店街の一角にある老舗の雑貨屋「涼風の香る丘」の店主キャサリンがお店に尋ねてきた二人を見て少し眉を寄せた。
 「はぁ・・確かにリュミエールさんはうちに居候しておりますけど」
 そう言って、回復薬を買いに来た客に商品を手渡してから、二人の顔を見た。
 「さっき訪ねてきた、えっと・・・ブルディカさん、だったかな。その人と一緒に出かけちゃいましたよ」
 それを聞いて、今度は訪ねてきた二人が眉を寄せた。
 -どうなってるんです?あなたの名前がありふれたものとは思えませんが・・・。
 張の囁きに、ブルディカが頷く。
 「すいませんが、少しの間リュミエールさんのお部屋を見せていただいてよろしいですか?」
 張はそう言いながら、キャサリンにそっと布袋を差し出した。それ相応のアデナが入っているようであったが、キャサリンの注目したのは袋にある紋様であった。獅子を描いた紅の家紋は、王並びに王に仕える家来に渡されるもので、つまりは目前の二人がアデン王に仕える者であるという証拠であった。
 「そそそんな、受け取れませんよ!それは!」
 慌てて部屋の入口を教えてくれたキャサリンの豹変ぶりに少し笑みを浮かべた二人が、案内されるまま、その部屋の前に立った。
 扉を二、三度軽く叩き、中からの返事を待ったが、代わりに聞こえたのは何かが暴れたような音であった。
 視線を交わした二人が扉を開けた。
 瞬間、ブルディカの動きが止まった。
 手狭の部屋の中、作業机らしきものの上には様々な書物が積み上がり、もうひとつの机の付近には床に落ちた大きめの布と散乱した食器、そしてー。
 「・・・・・これは?」
 お世辞にも上手に作られたとは思えない緑色の小さな人形が、顔だけを入口に立った二人にゆっくりと向けた。
 「・・・動く・・・人形?」
 最近、ここまで困惑したのは知り合いの泥酔したエルフに無理やり飲まされそうになった時以来だった。
 刹那、ぴょこぴょこと部屋の床を逃げ回るかのようにぐるぐる回り、人形は落ちていた皿やらさじやらを拾い上げ、どこへつもなくその身に隠していく。
 「これも・・・研究のひとつ、かな」
 張が呆れ顔で言って、しゃがみこむ。
 ぴたり、と動きを止めた人形が再び二人を見て、きょとん、としていた。
 
 
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