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人形が夢見るは如何なる未来か(6) ーブルディカの記憶ー

 一人がブルディカの左側、斜め上から空中で回転しつつ、手にした短剣の狙いをつける。
 同時にもう一人が、逆側から床を這うかのような低さで突進した。無論、その手には湾曲した剣を握っている。
 本来、音もなく暗殺することが使命であるが、時には戦闘を強いられる事もある。それに備えての訓練は欠かさず行われてきたし、左右上下からの連動の仕掛けは、実践でも数えきれないほどの勝利を挙げてきた。
 ーもらった!
 空中の男が感じるはずの肉を裂く手応えは、しかし、虚しく空を切る感覚を伝えた。
 転がりながら受け身を取ると同時に、獲物へ振り向こうとした時、自分の胸に見覚えのある柄が生えていた。
 自分の短剣だと気付き、咄嗟に視線を動かした。握っているはずの短剣は、そこになかった。腰にあったはずの長剣もまた失われている。
 突進した男は何が起きているのかがわからないまま、それでもブルディカの両足を薙ぎ払いに剣を振るった。
 部隊の中で最速と言われたそれは、しかし獲物をなぎ払う前にぴたりと止まった。
 背中から剣が貫いて、先端が床に刺さり、串刺し状態になった、と理解できたかどうか。
 表情を変えることなく、ブルディカは残りの四人を見た。
 先陣を切った二人がブルディカに到達する直前に自分の剣を納刀し、空中の敵から奪った二本の剣でそれぞれにトドメを刺した後、再び自分の武器を両の手に構えた。この一連の動きを、偽物だけが理解できていた。
 二人が倒された、という事実だけを即座に理解した二人が動く。
 右手に備えた武器は篭手の形状をしたもので、ダークエルフ達の間でガントレット、と呼ばれているものだ。主にスティングという鋭利で小さな刃物を投げつける為のもので、離れた獲物の命を奪う。
 「どうやら降参する気はないようだ」
 ブルディカの問いに無言のまま、今度は十数本のスティングが襲い掛かる。
 その場から回避行動を取って動くブルディカをスティングごと飛び越える一人が陽動となり、スティングと飛び越える一人に神経が向いた瞬間、左右の死角からの同時攻撃。刃を避ければスティングが、共に回避に成功しても飛び越えた一人が背後から、の三段構えを逃げ切った獲物は、存在しなかった。今まではー。
 ブルディカに左右から襲いかかった二人の眉間を、スティングが貫いた。
 勝てない。大きく仰け反る二人の気配を察知した、飛び越えた一人は悟った。
 結果、飛び越えた一人は獲物に向き直る事なく、そのまま扉へと直行する。
 無駄に命を散らすぐらいなら、無様に敗走するほうが、ましだ。
 取っ手に手が届く直前、スティングが首を射抜いた。
 残りのスティングが、いくつか壁に当たって、床に落ちたのは、三人が崩れ落ちたのと同時だった。
 襲い掛かるスティングを使ってその三人を仕留めたブルディカの手腕は、偽物の想像を遥かに超えていた。
 だが、それはある意味で偽物は理解していたはずであった。
 「さすがは元暗殺軍の英雄・・・伝説と共にその名を継いだか・・・・ブルディカ」
 今度はブルディカが答えず、そっと偽物に向き直った。
 その眼を見た偽物は、自らの運命を知った。
 
 
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